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洋書 Bibliophile's Chitchat

読んだ洋書や日々の読書について語っています。

The Sun Is Also a Star 読了

新年1発目のポストは、本当は年末に読み終えたNicola Yoonの こちらです。 

The Sun is also a Star

The Sun is also a Star

 

 

12月の1ヶ月でNicola Yoonの全作品(っても2冊ですが)を読み終えた形になります。

Everything Everything が非常に良かったのでこちらも期待しておりましたが、この作品、ちょっと前作とはトーンが違います。

ストーリーとしては、NatashaとDanielを中心として、ある1日を追いかけた物語。

Natashaは8年前だったか、一家揃ってジャマイカからアメリカにやってきた不法移民者。父親の飲酒運転をきっかけに不法滞在の事実が発覚し、高校のsenior yearを目前にしてジャマイカに強制送還させられる事態に。なんとかアメリカに留まる方法を模索し、カウンセラーに相談に行くNatasha。そこである弁護士を紹介され、事務所近くで時間を潰しているところに韓国系アメリカ人のDanielと出会う。

Danielはその日、Yale大学入学を目指した面接を目前に控えていた。本当は詩人になりたいと思っていたけれど、両親からの「医者になってほしい」という希望に従い、とりあえず両親によって敷かれた人生のレールに沿って日々を過ごしていた。
自身の将来に対して何ら疑問も抱かなかったDanielだが、Natashaとの出会いをきっかけに自分が本当は何をしたいのか、どうしたいのかを考え行動するようになる。

出会って間もなく惹かれあうものを感じるNatashaとDanielだったが、二人に残された時間はあとわずか。Natashaはジャマイカに強制送還されてしまうのか、Danielの将来は?

 

この本はただのYAではありません。予想していたほどシリアスな文体ではないものの、静かな、非常に繊細な語り口で強制送還や移民問題、愛や人生、希望、そして人種差別、ステレオタイプなどについても触れられています。特にDanielとNatashaがDanielの父が経営する店を訪れるシーンでは「ステレオタイプ」が引き起こす偏見のようなものが浮き彫りにされます。

二人のメインキャラクター、NatashaとDaniel、特にDanielが素晴らしい。優しくて穏やかで、フェアな考えの持ち主で、それでいて愛と運命を信じる情熱家。片や本当は心の片隅で愛や運命を信じたいと願っているかもしれないけれど、それをひた隠しにしようとする現実的で科学を愛してやまないNatasha。彼女に訪れる心境の変化は非常にゆっくりですが、惹きつけられます。

二人に残された時間があと半日もない、という点も二人の間に生まれたロマンスを引き立て、どこか切なく、心にズシンときます。

ライティングは前作同様、簡潔で優しい英語ですが、どこか散文的で美しい。今回は前作のようにいろいろイラストとかが入っていたりはしません。文章だけで勝負しています。
物語の大半はNatashaとDanielの視点から語られていますが、非常に面白いな、と思ったのが二人だけではなく、二人が関わった人々の立場からも物語が語られる、ということ。Natashaが声をかけたセキュリティ係の物語。Natashaの言葉が彼女に及ぼした影響など、様々な立場からのサイドストーリーがこの本を一層面白いものにしています。

特にエンディングは「こうきたか!」という感じで、読み終えた瞬間、なんて言うんでしょう、ため息しか出ませんでした。胸に何か熱いものがこみ上げる、という感覚を始めて味わいました。

非常に美しく、読み応えのある本です。たった1日の出来事を舞台に、ここまで物語を展開できるのか、と驚きました。

興味のある方はぜひ手に取って見てください。YAですが、こちらは大人にもおすすめです。